猫白血病闘病記③~緩和ケアと奇跡~

余命6日を宣告された琥珀。
少しでも苦痛のない最期の為に、先生と今後のケアについて話し合いました。

自分から質問を

余命宣告をされる前日の琥珀。
通院や投薬など嫌な事をたくさんされても、飼い主のお膝が好きでした。

琥珀に輸血をしてもらっている間自宅で待機していた飼い主ですが、その時間に先生への質問をたくさんメモしておきました。
この時点で「回復の見込みのない治療・延命はしない」と言う方針を家族と話し合って決めていたので、輸血による回復が見られなかった場合に備えて、緩和ケアについて気になる事をまとめておいたのです。

実際に先生と対面して話している時にはショックと悲しみが大きすぎて、正直先生が言っている事を何とか飲み込むので精いっぱい。質問を上手くまとめて言葉にする余裕なんて無く、帰って来てから「アレを聞けばよかった」「これも不安だから確認したかった」と疑問や不安が幾つも湧いてくるような感じでした。

動物病院の先生は、基本的に聞かれた事にしか答えてくれません。
愛するペットの病に直面した飼い主の“聞きたい事”はそれはもう膨大な量で、その全てに先回りして答えを用意する事は出来ないからだと思います。

だから、飼い主の方から聞いてください。

不安な事、わからない事、今後の介護で何を気を付ければ良いか。
聞けば必ず答えてくれるはずです。
琥珀の時は先生の回答をメモしましたが、先生に許可を取ったうえで録音させてもらった方が、後で冷静になって聞き直せたなぁと思います。

私の場合は先生に、

・琥珀が冷たい床で寝たがるのはそのままにさせてあげた方が良いのか。
・貧血が進んだら身体を温めた方が良いのか、冷やした方が良いのか。
・酸素ルームのレンタルは必要か。
・吐き気がある時の投薬はどうすればよいか。
・水を飲まなくなったら飲ませた方が良いのか。
・貧血の末期はどんなふうになるのか。少しでも苦しまないように、何が出来るのか。

などを質問しました。

特に酸素ルームについては、猫白血病で闘病している他の方のブログでも度々登場していたので、少しでも琥珀の苦痛を和らげる助けになるのではと期待していました。
しかし、

「琥珀ちゃんの場合は赤血球が足りず、体に酸素を運べない事で呼吸苦の症状が出ています。酸素ルームに入れてあげても酸素が運べない事に変わりはないので、楽にはならないかな、と。
なので酸素ルームのレンタルは必要ないです」

と先生に説明され、肩を落としました。
確かに酸素ルームを使っている闘病ブログの猫ちゃんは縦隔型リンパ腫による呼吸困難の子が多く、貧血の琥珀とは呼吸苦の原因が違ったのです。
ですが、ここで先生に説明して頂いた事で
「あの時酸素ルームについて聞いていたら」「もっとやれる事があったんじゃないか」と言う後悔を失くすことが出来ました。

もし、今この記事を読んでいる方の大切なペットが(そんな事にならないよう心から祈りますが)将来病気になった時、どうか先生に質問する事を躊躇わないで欲しいと思います。

家族と穏やかに

気分転換でリビングの出窓へ。
心なしかご機嫌。

輸血をしたものの血液検査の数値的にはあまり効果が見られなかった琥珀ですが、気休め程度にステロイドの投薬は続ける事になりました。
痛み止めと吐き気止めの薬も貰い、緩和ケアについても、思いつく限りの事は先生に確認しました。

貧血の末期はどんな風になるのか、と言う私の質問に対して先生が言った、

「このままじわじわと貧血が進行するならば貧血の状態に身体が慣れるので、それ程苦しむことなく終わりに向かうと思います」

と言う言葉ごと抱き締めるようにして、琥珀のキャリーを抱き、トボトボと車に戻りました。

琥珀が猫白血病と診断されてからこの日まで泣き通しだった飼い主ですが、まだ涙が出るのかと思う程、助手席の琥珀を見下ろしてボロボロ泣きました。

助けてあげられなくてごめん。守ってあげられなくてごめん。治してあげられなくて、本当にごめんね。

そしてそれを最後に、もう琥珀の前では泣くまいと心に決めました。泣かないのは無理そうだったので、少なくとも琥珀の前では泣くまい、と。
残りの日々を、琥珀にとって幸せなものにしよう。
そう思って、琥珀を家族の元へ連れて帰りました。

輸血の金額は病院によって異なりますが、琥珀の場合は約8万4千円でした。
これに2回分の血液検査代、増血剤、インターキャットなどで約9万円ちょっとの支払いになりました。

 

家族や琥珀の保護主さん、Xのフォロワーさんに琥珀の余命と緩和ケアに移行する事を報告してからは、とにかく少しでも多くの時間を琥珀のそばで過ごしました。

琥珀は貧血の為ほとんど横になっていてご飯もあまり食べませんでしたが、強制給仕などはしませんでした。
1日1回の投薬以外で、もう琥珀の嫌がる事は何一つするまいと決めていたからです。
唯一自発的に舐めるチュールを好きなだけ与え、元気だった時に好きだった嗜好性の高いおやつフードを買い漁り、すぐに食べられるように小皿に入れて琥珀の近くに置きました。

ちなみに色々なおやつフードの中でもやはりチュールの食いつきはダントツで、カロリー2倍のエナジーチュールや総合栄養食チュールなど、闘病期間中は本当にお世話になりました。
最近悪い話題に上がっていたイナバさんですが、それでも私は感謝をせずにはいられません。

またこの期間中、猫のターミナルケアや投薬方法について、こちらの本がとても参考になりました。

  

飼い主とお昼寝。

 

家族もかわるがわる琥珀の隔離部屋に遊びに来ました。

 

琥珀に嫌われ気味の父も。

 

妹や母も。

 

特に半分在宅ワークの妹は、私が仕事で不在の間も琥珀の側についていてくれ、食事量や様子について事細かに報告してくれました。
半年余り続いた琥珀の闘病生活で、妹の存在は本当に大きかったです。誇張でも何でもなく、一生分の恩があると思っています。
投薬や歯磨き、通院でも協力してくれた妹には感謝してもしきれません。

 

久しぶりに茶子さんと。
琥珀が全然動かないので、茶子さんも戸惑っていました。

猫白血病は空気感染はしないので、注意して見守りつつ茶子さんとも対面させました。
琥珀がぐったりして全然動かないので、いつも元気な琥珀に押され気味だった茶子さんも戸惑い気味。
茶子さん大好きな琥珀は目だけはじーっと茶子を見つめているのですが、体が怠くて動かせない様子なのが見ていて切なかったです。

生きる力

そんな風に1日1日を穏やかに、家族みんなで琥珀を見守りながら過ごしていたのですが、不思議と余命宣告を受けた次の日から、徐々に琥珀の調子が上向いているような気がしました。

後はもう少しずつ命が尽きるのを待つばかりだと。その為の6日間だとばかり思っていたのに、むしろ食欲も少しずつ戻って来ていたのです。
相変わらず横になっている時間は長いものの、体を起こしてしっかり座ったりもするようになりました。

そうして気が付けば金曜日。
「次の土曜日までもつかどうか…」と言われた琥珀が、余命である6日目を迎えようとしていました。

金曜日の朝に妹に撮ってもらった写真です。
まだまだ鼻は白いもののしっかりした顔つきをしている琥珀。

あまり期待をしてまた絶望したくないとは思いつつも、希望を抱いてしまうのを止められませんでした。6日前より明らかに元気になった様子の琥珀を見て、もしかしたら輸血の効果が遅れて出たのでは…と。

宣告されていた余命を過ぎて薬が無くなったので、土曜日には再び琥珀を連れて病院へ向かいました。
そこで行った血液検査で、衝撃の結果が出たのです。

 

 

こちらがこの日の琥珀の血液検査結果。
前回と変わらないように見えるかもしれませんが、注目して頂きたいのはRETIC(網状赤血球数)です!

 

 

RETIC(網状赤血球数)とは、わかりやすく言うと赤血球の赤ちゃんの数。
赤ちゃんの数が多いと言う事は、血が沢山作られている→造血機能がある!と言う事になるのですが、琥珀はこの赤血球の赤ちゃんの数が、前回2.7から31.7まで回復していたんです!

これが輸血のお陰なのかステロイド投薬の効果なのかは分かりませんが、完全に造血機能を失ったと思われていた琥珀の骨髄が、まだ機能している事が判明しました。
RETICの上昇が貧血の数値に反映されるのは赤血球の赤ちゃんが大人になってからなので多少の時差がありますが、このまま行けば来週あたりには貧血も少しずつ回復するでしょう、と。

この時の気持ちを、どう表したら良いかわかりません。

治療のしようがある。手の施しようがない状態ではない。
琥珀の身体がまだ病気と闘おうとしている。
その事実が、堪らなく嬉しかったです。
猫白血病ウイルスが陽性で発症している現実は変わりませんが、それでもかなり前向きな気持ちになれました。

そしてこの日から琥珀は緩和治療ではなく、再び本格的なFeLV性貧血への対症療法を開始する事になるのです。

猫白血病闘病記④~陰転までの半年間~に続きます。

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ハナ
猫好きなOL。
アメリカンショートヘアーの箱入り娘茶子と、「顔が良いクソガキ」ことキジ白の琥珀と暮らす。
飼い猫2匹が元気で幸せならとりあえず全てを許す女。
猫とお酒とジャンクフードをこよなく愛す。